70年代研究所

70年代~80年代!あの時代にタイムスリップ!

【斉藤哲夫と社会の窓】~名盤『バイバイグッドバイサラバイ』

みなさん、シンガー・ソングライターの斉藤哲夫をご存知ですか?

 

斉藤哲夫(1950年4月4日生まれ)。1972年、インディーズのURCレコードから「悩み多き者よ」でデビュー。ファーストアルバム『君は英雄なんかじゃない』を発表。その収録曲「されど私の人生」は、吉田拓郎がカヴァーしたことで有名曲になりました。

拓郎が他のシンガー・ソングライターの曲をカヴァーするのはとても珍しいこと。それほどお気に入りの曲だったのでしょう。

「もうどうでもいいのさ つまらぬことは考えないで そこからの道を急ぐのさ それが最も肝心さ」と始まるこの曲は、「変わる 変わる 目の前が 変わってそれでおしまいさ されど私の人生は されど私の人生は」というサビで終わります。

重く胸に刺さる斉藤哲夫のこの文学性は、ボブ・ディランの影響から。当時彼は、「若き哲学者」、「歌う哲学者」などと呼ばれていました。

 

君は英雄なんかじゃない(1972年)


君は英雄なんかじゃない +3

 

 

そして1973年、斉藤哲夫23歳。CBS・ソニーへ移籍。アングラからメジャーへの第一歩。いきなり名盤を発表します。

 

バイバイグッドバイサラバイ(1973年)


バイバイ グッドバイ サラバイ

 
1 今日と明日をむすぶかけ橋
2 バイバイグッドバイサラバイ
3 もう春です(古いものはすてましょう)
4 ねえ君
5 今日から昨日へ
6 頭の中一ぱいに続く長い道
7 ここは六日町あたり
8 親愛なる紳士淑女の為に
9 合間をぬって
10 吉祥寺


ファンが求める“難しいことを歌う”ことに縛られず、純粋に音楽を楽しんでいるのが伝わってくるアルバムです。メッセージソング「もう春です(古いものはすてましょう)」をさらりと歌い、「ねえ君」は辛辣なラブソング。「今日と明日をむすぶかけ橋」、「親愛なる紳士淑女の為に」では激しいシャウト! 「合間をぬって」「ここは六日町あたり」ではフォーキーな味わい。

綺麗に歌う上手に歌うことなど頭になく、地声もファルセットも裏声も何でも使って自由自在。トリッキーでロックでポップでアコースティックなナンバーが詰まっています。ボブ・ディランの強い影響から離れ、ビートルズやロックへ寄ったことで、メロディ・メイカ―として開花したと言えるでしょう。

捨て曲が一曲もない、珠玉の名曲たちなのです。特にアルバムタイトルになった「バイバイグッドバイサラバイ」は、まるでURC時代と決別し、新しい自分に飛躍する決意のよう。聞き手は、各自が自分の事に置き換えて聴いていると、そのポップなメロディーと歌詞が耳から体に染み込んできます。

また、友人に会いに行くことを歌っただけの「吉祥寺」も、なんてことのない日常が頭に浮かんで、スキップして誰かに会いに行きたくなる名曲。70年代が生んだ、傑作中の傑作アルバムであります!

 


グッド・タイム・ミュージック (1974年)


グッド・タイム・ミュージック

 

これもいいアルバムですね。さらにポップになっています。個人的には「URC」と「CBS・ソニー」の融合、つまり「アングラ」と「メジャー」が融合された『バイバイグッドバイサラバイ』が好きですが、こちらも傑作アルバムに違いありません。


2006年くらいかな、テレビをつけたら斉藤哲夫が歌っていて、飛び上がって驚いたことがありました。『クリスマスの約束』という小田和正の番組でした。その時小田和正とデュエットしていたのが、この表題曲「グッド・タイム・ミュージック」でした。(他には「悩み多き者よ」もデュエット) その時の斉藤哲夫のボーカルが素晴らしく、高音も小田和正より出ていてビックリ。でも小田和正っていう人は、なかなか男っぽいというか骨があるというか、若い子は誰も知らない斉藤哲夫を、あの番組に引っ張り出してきて、デュエットするんだからね。感心しました。

 

 


プラチナムベスト 斉藤哲夫 ライフタイム・コレクション (UHQCD)

 

さて、80年代に入ってからの斉藤哲夫は、シングル「いまのキミはピカピカに光って」(1980年)をいきなりヒットさせて、僕らファンを驚かせます。宮崎美子がTシャツを脱いでビキニになる、ミノルタのCMソングですね。でも作詞は糸井重里、作曲は鈴木慶一なので、斉藤哲夫は歌っただけですが。

 

その後も、地道にライブハウスなどで歌い続けてきた斉藤哲夫さん。筆者は、もう25年くらい前になりますが、斎藤哲夫さんや高田渡さんとお仕事をさせていただいた時期がありまして、仲良くもさせていただきました。本当にこのふたりは気さくで明るくて楽しくて。吉祥寺の店頭で鰻屋に鰻を焼かせて、何度も見に行って、哲夫さんの曲に「さんま焼けたか」って曲もあったけど、次回作は「うなぎ焼けたか」に決まりだ! とかなんとか言って。

 

 

ダータファブラ(1992年)

ダータファブラ

 

 

ライブハウスも何度も行きましたけど、歌っている途中で「わりぃ、ちょっとトイレ行かせて」と言って中断。トイレから帰ってくると、社会の窓が全開(笑)。一番前で見てたから、「チャック!チャック!」と教えました。とにかく「社会派」「歌う哲学者」なんてイメージは全然なくて、社会の窓が全開の陽気な人だったなぁ。若い頃は時代と一緒にとんがってたのかもしれません。でも社会の窓を開けた『バイバイグッドバイサラバイ』からひと皮むけたんですね(笑)。その後、ご病気もありましたけど、見事復活されましたので、またライブに行きたいです! 

そして70年代の名盤『バイバイグッドバイサラバイ』は、ぜひ一人でも多くの人に聴いていただきたいのです!

 

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