70年代研究所

70年代~80年代!あの時代にタイムスリップ!

梶原一騎!劇画大魔王、狂気の時代!

劇画の王様!劇画の巨人!
9月4日は梶原一騎の誕生日。今回は昭和の劇画大魔王・梶原一騎を取り上げます!

 

●梶原一騎(かじわら いっき、1936年9月4日~ 1987年1月21日50歳没。ご在命なら85歳)
漫画原作者・小説家・映画プロデューサー・芸能事務所社長。
正確な生年月日は所説あり。本名も高森朝樹か高森朝雄かどっちかです。
その容姿は、巨漢(180㎝、体重90㎏)、サングラスに坊主頭の強面。
性格は狂暴。好色。柔道・空手黒帯。

 


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漫画原作の代表作は、『巨人の星』(画:川崎のぼる)、『あしたのジョー』(画:ちばてつや)、『柔道一直線』(作画:永島慎二、斎藤ゆずる)、『キックの鬼』(作画:中城けんたろう)、『赤き血のイレブン』(作画:園田光慶、深大路昇介)、『タイガーマスク』(画:辻なおき)、『愛と誠』(画:ながやす巧)、『空手バカ一代』(画:つのだじろう・影丸譲也)、『侍ジャイアンツ』(画:井上コオ)、『プロレススーパースター列伝』(作画:原田久仁信)など数知れず!

言わずと知れた、漫画劇画原作者の皇帝、閻魔大王として60年代~80年代に君臨しました。『MONSTER』『二十世紀少年』の浦沢直樹をして「手塚治虫さんと双璧をなす想像力。(漫画界の)シェイクスピア的な存在」と言わしめた存在です。あの漫画の神様・手塚治虫先生が描けなかったジャンル「スポーツ漫画」の帝王として

“スポ根ブーム”を巻き起こしました。


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豪快で壮大なストーリー展開! 派手な必殺技! 強いヒーローの挫折や苦悩! ハッピーエンドではない哀愁の美学! とにかくあの時代は梶原一騎の独壇場でした。

 

揚げ足を取ればいろいろありますよ。ハッタリ、盛り過ぎ、男の気持ちを深く描く一方、女の描き方がステレオタイプで浅いとか。特に『空手バカ一代』や『プロレススーパースター列伝』などの実話系劇画は、盛り過ぎ、作り話のオンパレード。でも漫画だからいいんだ!という強行突破! 面白ければそれでいいのだ! という哲学!

 


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『巨人の星』の有名なセリフ「白鳥は優雅に見えても、その水中にかくれた足で絶え間なく水をかいている」も、よく考えると、絶え間なくでもないだろ、たいしたことじゃないだろw と思いますよね。


でも、花形満にあの顔で「青い水面に美しく優雅に浮かぶ白鳥は、しかし、その水中にかくれた足で絶え間なく水をかいている、けっている。だからこそ、常に美しく優雅に浮かんでいられる。ぼくは、その白鳥であるためにも、星くん・・・君を打つ!」と言われるとグッとくるのであります。

 

挫折中の星飛雄馬を父親の一徹が諭したセリフ「竜馬はこういった。"いつ死ぬかわからないが、いつも目的のため坂道を上っていく。死ぬときは、たとえどぶの中でも前のめりに死にたい"」も、坂本竜馬はそんなこと言ってないですけどねw でもそう言われると説得力があって感動してしまいます。

 

梶原一騎はストーリーテラーでキャラ作りも巧みですが、

とにかくセリフ力が凄すぎる!

のです! それが実はハッタリや誇張だったとしても、心に刺さった時点で読者の負けなのであります。

 


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昭和という時代が、梶原一騎という存在とジャストフィットして、とんでもない名作の数々を作らせたのだと思います。セクハラ、パワハラだとすぐ騒ぐ、ネットで調べて事実と違うと叩かれるなど、令和の時代ではこの自由な発想は無理ですよね。仕事もそうですけど、梶原一騎のやりたい放題の私生活もセクハラ、パワハラ三昧ですから、こういう豪傑は今の時代では生きていけなかったでしょう。

 

しかし、寛容だった昭和時代でも、さすがに梶原一騎大先生はやり過ぎました!
1983年5月25日、梶原一騎は『月刊少年マガジン』副編集長への傷害事件で逮捕されます。この逮捕をきっかけに、過去の悪事も次々に暴かれてしまうのであります。金がらみのトラブルから暴力団員と一緒に起こした「アントニオ猪木監禁事件」や、アブドーラ・ザ・ブッチャーの本をめぐり10万円を脅し取った「ゴーストライター恐喝事件」、赤坂のクラブホステスの髪をつかんで引きずりまわした「ホステス暴行事件」、さらには無実だった「覚醒剤常習疑惑」もかけられました。
当時のマスコミも、ここぞとばかりに梶原一騎を叩きまくり、連載中の作品は打ち切り、単行本は絶版となり、名声は地に落ちたのであります。

 


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悪いことは続くもので、2か月後に保釈されてすぐ病に倒れてしまいます。長年の暴飲暴食が原因の壊死性劇症膵臓炎という重病でした。死の淵をさまよい、4度の手術によって奇跡的に生還しますが、87キロあった体重が退院時には60キロを割っていたと言います。

1985年3月14日、東京地裁で、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた梶原一騎。晩年は、弟・真樹日佐夫との合作で「正木亜都」のペンネームで小説家に転身を試みます。『あしたのジョーばらあど』とかそういうの。これが変なミステリーでつまらないという・・・。

 


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回顧録のエッセイも書きました。『わが懺悔録ーさらば、芸能界の女たち』というエッセイ。これがまた、女優だの歌手だの、芸能人の女とヤッたとかモテたとか、しょうもない内容がほとんど。読者が知りたいのは漫画家や極真空手やプロレスラーとの話なんだけど、わかってないなぁ~と思いました。でもそんなエッセイの中にも本音が見えた一文があります。自分が売れていた頃のことを振り返り、「狂気の時代」だったと語っている部分です。


「酔って暴力をふるっていたから、“狂気の時代”だったというわけではない。妻のこと、子供のこと、尋常とは思えない売れっ子ぶり、そして有名タレントたちとの関係…、どれひとつとっても常識では考えられないことばかりだった。そのすべてが狂気だったのだ。つまり、竜宮城の桃源郷で浮かれる浦島太郎だったと、いま玉手箱をあけて立ちのぼるケムリに呆然としながら回顧するオレ…。そういや、ずいぶんシラガもふえましたな」(『わが懺悔録ーさらば、芸能界の女たち』より抜粋)


この一文だけは、生身の梶原一騎を見た気がしました。

 

でも「竜宮城の桃源郷で浮かれる浦島太郎」になれたのも、次々と読者の心をつかみ、名作・ヒット作を連発したからに他なりません。

60〜70年代をぶっちぎりのトップで爆走し、逮捕というかたちで転んだあと、わずか4年でこの世を去った梶原一騎。享年50歳。巨漢そのままの、太く短い人生でした。

昭和という時代が生んだ劇画大魔王・梶原一騎!その作品は、永遠に不滅です!

 

 

 

 

 

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