70年代研究所

70年代~80年代!あの時代にタイムスリップ!

詩人・岡本おさみの隠れた名曲

前回、作詞家・松本隆さんの隠れた名曲をご紹介しました。松本隆さんといえば、吉田拓郎さんとのコンビでも有名です。でも吉田拓郎さんの歌で、もうひとり忘れてならないのが、岡本おさみさんですね。

特に70年代は「岡本おさみさんの詞のイメージ=拓郎さんのイメージ」と言ってもいいくらいなのです。

吉田拓郎さんの歌は、拓郎さん自身が作詞したストレートな男の世界と、岡本おさみさんの作詞した文学的世界、松本隆さんの作詞した物語の世界、この3つの詞の世界観によって幅が広がり、我々を魅了するのであります。

今回は、そんな岡本おさみさんの隠れた名曲をご紹介いたします。

 

●岡本 おさみ(おかもと おさみ、1942年1月15日 - 2015年11月30日)。

作品は、吉田拓郎「落陽」、「アジアの片隅で」、「旅の宿」、「祭りのあと」、「おきざりにした悲しみは」、「君去りし後」、「こっちを向いてくれ」、「また会おう」、「晩餐」、「望みを捨てろ」、「暑中見舞い」、「花嫁になる君に」、「ひらひら」、「まにあうかもしれない」、「制服」、「もうすぐ帰るよ」、「リンゴ」、「竜飛崎」(withムッシュ)、「いつか夜の雨が」、「サマーピープル」、「漂流記」、「白いレースの日傘」、「襟裳岬」(森進一)などなど。

拓郎さんの曲以外でも、泉谷しげる「黒いカバン」、岸田智史「きみの朝」、南こうせつ「こんな静かな夜」、森山良子「歌ってよ夕陽の歌を」などなどあります。

 

【岡本おさみさんの隠れた名曲】

一曲目は「悲しいのは」です。名曲ですね。ファン的にはあんまり隠れてもいないですねw でもこの曲は、最初なかなかレコード化されませんでした。1974年頃からライブでは歌われていましたが、なぜかアルバム未収録。拓郎さんにはそういう曲多いですね。「家族」、「街角」、「この次はこの街で」、「僕の一番好きな歌は」、「後悔していない」、「東京の長く暑い夜」などなど。名曲なのになぜかレコード化されていません。

でも、この「悲しいのは」は、1976 年のアルバム『明日に向かって走れ』にやっと収録されます。ただ、このアルバムバージョンは、拓郎さん自身も言ってましたが、ちょっと物足りない出来。

ノリノリなリズム&パーカッションの明るいサンバは、やはりライブが生きる曲なのです。 82年のライブアルバム『王様達のハイキング』で聴くことをお薦めいたします。ちなみにこの曲は、1985年のつま恋でのオープニングナンバーでもあります。

岡本おさみさんと拓郎さんは、一言で言ってしまえば「陰と陽」。あるいは「月と太陽」。「悲しいのは」というこの詞も、ヘタなフォークシンガーが作曲したら、暗くて地味で重い歌になるでしょう。それを拓郎さんはラテンにしてしまう。このミスマッチが相乗効果になって心に刺さるのであります。

 


「悲しいのは」 (作詞・岡本おさみ 作曲・吉田拓郎)

悲しいのは 空ではないんです
悲しいのは 唄でもないんです
悲しいのは 遠すぎる事ですか?

悲しいのは 男じゃないんです
悲しいのは 女でもないんです
悲しいのは 生きて行く事ですか?

悲しいのは 夜ではないんです
悲しいのは 朝でもないんです
悲しいのは 時が過ぎてしまう事

悲しいのは 顔ではないんです
悲しいのは 心でもないんです
悲しいのは この痛みだけ

悲しいのは 死ぬ事ではなく
悲しいのは 人生でもなく
悲しいのは 私だからです

悲しいのは 私がいるために
悲しいのは 私であるために
悲しいのは 私自身だから


すごい詞ですよね。「悲しいのは」という問いかけの答えは、「時が過ぎてしまう事」
そして、「悲しいのは」死ぬ事ではなく、「悲しいのは」人生でもなく、「私だからです」! 人それぞれ悲しいんです。それは突き詰めて言えば、自分だから悲しいんですね。金持ちでも貧乏でも、男でも女でも、成功していても落ち目でも、若くても年寄りでも、それぞれの個人個人に悲しさはあるわけで、それは一言で言ってしまえば「私だから」悲しいんですよね。岡本おさみさんの詩の深さが、短い言葉から伝わってきます。

 

ライブアルバム『王様達のハイキング』(1982)


王様達のハイキング IN BUDOKAN(紙ジャケット仕様)

「悲しいのは」のベストテイクをご堪能ください! 

 

 

 

次にご紹介する、岡本おさみさんの隠れた名曲は、「子供に」です。これは拓郎さんのシングル「金曜日の朝」(1973年)のB面ですね。アルバムには未収録なので、これこそ隠れた名曲と言っていいでしょう。

 

「子供に」 (作詞・岡本おさみ 作曲・吉田拓郎)

夢はいつでも ぬけがらなので
夕焼けの美しいときは
いつも寂しいだろう

子供よ 君は失った夢のあとに
ふと生まれた 夢のように

なぜ生んだか 生まれたくて
生まれてきたんじゃないと
きっというだろう

子供よ かつて私が父にはいた
不届千万な あの啖呵を

今はねむれ 君が今人生に
欠席しても 誰もとがめない

子供よ 新しい船に乗り込み
帆をはる 新しい水夫であれ

今はねむれ 君が今人生に
欠席しても 誰もとがめない

今はねむれ 君が今人生に
欠席しても 誰もとがめない

今はねむれ 君が今人生に
欠席しても 誰もとがめない

今はねむれ 君が今人生に
欠席しても 誰もとがめない

今はねむれ 君が今人生に
欠席しても 誰もとがめない


拓郎さんが最初の結婚で子供が出来て、出産祝いに岡本さんが拓郎っぽく書いたとも言えるこの詞。吠える叫ぶ!拓郎さんの圧倒的なボーカルにも注目です! 子供をテーマにした曲なんてろくなのがないけど、こんなすごい詞で、あんな風に歌うなんて、このコンビの凄まじさに驚かされます!

 

 『Golden J-Pop / The Best 吉田拓郎: One and Only ±1』


Golden J-Pop / The Best 吉田拓郎: One and Only ±1

「子供に」はこのCDで聴けます。`77年発表の3枚組限定アナログ盤『ONE AND ONLY』を2枚組CDに。ソニー時代の拓郎さんの名曲たち。+1はこの「子供に」なのであります!

 

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岡本おさみさんの隠れた名曲をご紹介いたしました。
吉田拓郎さんとコンビを組んだアルバムも、ぜひ聴いてみてください。

 


『元気です。』(1972年)


元気です

よしだたくろう初期の傑作アルバム。岡本おさみは「こっちを向いてくれ」「まにあうかもしれない」「リンゴ」「また会おう」「旅の宿」「 祭りのあと」、B面のほどんどを作詞。怒涛の名曲たちです。

 

 

『伽草子』(1973年)


伽草子

 「からっ風のブルース」「蒼い夏」「暑中見舞い」「ビートルズが教えてくれた」「制服」「話してはいけない」「夕立ち」が岡本おさみの作詞。この時期は拓郎自身も「おかもっちゃんの詞に自分の詞が負けてる」的な発言をしています。まぁ拓郎さんは負けず嫌いだから、自分もすごい詞を書きまくり、翌年傑作アルバム『今はまだ人生を語らず』を発表。そんな気持ちを払拭するわけですが。

 

 

『LIVE’73』


LIVE’73

日本のレコード史上初の本格的なライヴアルバム。豪華な凄腕ミュージシャンとライオンのように吠える拓郎。代表曲「落陽」もこのアルバムで登場。「君去りし後」「君が好き」「都万の秋」「野の仏」「晩餐」「ひらひら」「望みを捨てろ」、岡本おさみの詞が跳ねる踊る染みる!もう傑作としか言えない。

 

 

『アジアの片隅で』 (1980年)


アジアの片隅で(紙ジャケット仕様)

なんと言っても12分を超える大作「アジアの片隅で」ですよね。こういうのは他のシンガーには歌えない。80年代の拓郎さんの代表曲であります。他にも「まるで孤児のように」「いつも見ていたヒロシマ」「古いメロディー」「いくつもの朝がまた」を岡本さんが作詞。

 

 

『月夜のカヌー』 (2003年)


月夜のカヌー

時は21世紀。吉田拓郎+岡本おさみタッグが復活! 「花の店」「少女よ、眠れ」「聖なる場所に祝福を」「星降る夜の旅人は」「月夜のカヌー」「春よ、こい」「白いレースの日傘」「ときめく時は」。岡本さんの詞は衰えておりません。

 

 

『歩道橋の上で COUNTRY BACK STAGE DOCUMENT』 (2007年)


歩道橋の上で COUNTRY BACK STAGE DOCUMENT [DVD]

 吉田拓郎のドキュメントDVD及びスタジオ・アルバム。この時期、拓郎さんは体調を崩し、ツアーやレコーディングが延期・中止などありました。その裏側が見られるのがこの作品です。岡本おさみさんと最後のタッグ。CDに入っている「歩道橋の上で」「空に満月、旅心」「沈丁花の香る道」「街角のタンゴ」「黄昏に乾杯」「秋時雨」の全6曲はすべて岡本さんの作詞。でもなぜかDVDにしか収録されていない「錨をあげる」が一番よかったり。

 

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『岡本おさみ アコースティックパーティーwith吉川忠英』 (2003年)


岡本おさみ アコースティックパーティーwith吉川忠英

作詞家岡本おさみの作品を今一度世に伝えるべく企画された作品集。ギタリスト吉川忠英がアレンジ&演奏。シオン、加川良、福山雅治、南こうせつ、あがた森魚などが、岡本おさみの世界を歌います。

 

偉大なる詩人・岡本おさみさんの世界を、今一度ご堪能ください!

 

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