70年代研究所

70年代~80年代!あの時代にタイムスリップ!

松本隆の『ローリング30』

『ローリング30』とは、78年リリースの吉田拓郎70年代最後のスタジオアルバムである。え?だったらタイトルが違うよね。いやいやいいんです。このアルバムは、松本隆なくしてはあり得ない作品なのだから。

 

言わずと知れたカリスマ作詞家・松本隆は、日本初の日本語で歌うロックバンド「はっぴいえんど」のドラマー(作詞も)として活躍。解散後、作詞家に転身。

 

アグネス・チャン「ポケットいっぱいの秘密」、イエロー・マジック・オーケストラ「君に、胸キュン。」、大瀧詠一「君は天然色」、太田裕美「木綿のハンカチーフ」、KinKi Kids「硝子の少年」、桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」、小泉今日子「水のルージュ」、近藤真彦「スニーカーぶる〜す」、C-C-B「Romanticが止まらない」、竹内まりや「SEPTEMBER」、寺尾聰「ルビーの指環」、トランザム「ビューティフル・サンデー(訳詞)」、中川翔子「綺麗ア・ラ・モード」、中原理恵「東京ららばい」、中森明菜「二人静 -「天河伝説殺人事件」より」、中山美穂「WAKU WAKUさせて」、浜田省吾「LOVE TRAIN 」、原田真二「キャンディ」、氷室京介「魂を抱いてくれ」、松田聖子「白いパラソル」、「風立ちぬ」、「赤いスイートピー」、「渚のバルコニー」、「SWEET MEMORIES」、南佳孝「スローなブギにしてくれ(I Want You)」、森進一「冬のリヴィエラ」、薬師丸ひろ子「探偵物語」、矢沢永吉「Anytime Woman」、安田成美「風の谷のナウシカ」、山下久美子「赤道小町ドキッ」、ラッツ&スター「Tシャツに口紅」、吉田拓郎「外は白い雪の夜」

 

などなどなど。とても書ききれないヒット曲や名曲を手がけた天才作詞家である。シングル曲だけでなく、アルバム全体をバランスよく作詞する才能も、作詞家の中で群を抜いている。大瀧詠一の名盤『A LONG VACATION』はその代表格と言えるだろう。


そんな松本隆が29歳吉田拓郎が32歳の時、このアルバム『ローリング30』は制作された。2枚組21曲のほとんど(18曲)を松本隆が作詞。その制作の過程が、おそらく世界唯一のとんでもない方法だったのである。先日(2021年5月14日)、『吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』で拓郎自身が、およそ次のように語っていた。

 

「一緒に組んでアルバムを作ろうという企画を、松本隆くんに持っていった。最初から2枚組(の構想)だ。だから18曲か20曲くらいいるなぁ。一気にやろう。一か月くらいでやっつけちゃおう。目の前でキミ書いてくんねぇか。俺、せっかちだから横で待ってるから。で、詞が出来上がったら、すぐ俺が曲をつける。そういう流れ作業みたいにバババッて、あれこれ考えないで曲作りやんねぇか。キミは詞に徹する。僕はメロディに徹する。そういうのどうだろう」

どうだろう? って、いいわけないし、そんなアルバムの作り方は聞いたことがないのだが、なんと松本隆はOKし、実際に曲作りからレコーディングまで一気に行う“合宿レコーディング”は決行された。場所は、箱根ロックウェルスタジオ。

 

「スタジオ近くの素敵なリゾートホテルのプールサイドの部屋を借り切った。部屋は俺と松本は隣りあわせでね、彼が詞を書き終わったら、すぐギターを持って俺が曲を作って、カセットテープに吹き込んで、すぐ近所のスタジオに行ってレコーディングする。お互いに刺激しあったね」

と、拓郎さんは語っていたが、せっかちな拓郎さんがギターを持って待機している中で、次から次へと作詞できるって、どんだけ才能あるんだ松本隆先生! しかもその作品のクオリティの高さ! 

 

「あのアルバム、今聴いてもね、すっげえいいなぁ。ほんとに短い期間でふたりでパパパパって作ったんだから。よくこれ作ったなぁと思う。直しとかあんましなかったんだなぁ それがよかったのかもしれないね。大学の受験勉強の一夜漬けみたいなかんじだったな。松本隆の詞は、言葉の持つリズム感のよさがいい。彼の持つ言葉が踊ってる。俺、岡本おさみさんていう、リズム感の全くない人の詞を、あれこれ苦労しながら作ってきたから(笑)。松本隆の、あのリズム感のある言葉たちがわ~ってくると、すぐ曲ができちゃうんだよ」

岡本おさみさんは作詞家というか、詩人ですからね。でも初期の拓郎さんは、あの岡本おさみさんの字余りの歌詞を無理やり歌って“字余りソング”と呼ばれて有名のなったのも事実ではあります。岡本おさみさんと松本隆さんは、まったくタイプが違いますが、どちらもすごい才能ですよね。作曲する立場なら松本さんがイイ!というのはわかりますが。

 

そんな『ローリング30』のジャケット撮影はサイパンで行われ、松本隆さんも同行した。たぶん松本さんは行かなくてもよかったと思われますが、一緒に行ったら楽しいですからね(笑)。そんなサイパンのビーチで逆ナン?ナンパ?した話も『吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』でしてました。

「サイパンの話、あぶねぇなぁ。でもあの頃、松本と楽しかったの覚えてるんだよ」
と拓郎さんは笑っておりました。

 

『ローリング30』は、天才同士がバチバチそして肩を組みながら共同作業で一気に完成させた、奇跡のアルバム、不滅のアルバムなのであります。拓郎さんは現在、ラストアルバムの準備に入ってるようで、こちらも15~16曲は入るそうなので、『ローリング30』以来の2枚組オリジナルアルバムになるのでしょう。すごく楽しみです。

松本隆さんとの名コンビが復活するのかにも注目ですね。

 


ローリング30(紙ジャケット仕様)


全作詞:松本隆(特記以外)、全作曲:吉田拓郎
CD盤

Disc1

ローリング 30

まるで大理石のように
英雄
君が欲しいよ
ハートブレイク・マンション
裏街のマリア
恋唄
外は白い雪の夜

Disc2

狼のブルース
旅立てジャック
白夜
わけわからず (作詞:吉田拓郎)
冷たい雨が降っている
虹の魚
言葉
Baby
無題
海へ帰る (作詞:吉田拓郎)
君の街に行くよ
素敵なのは夜 (作詞:白石ありす)


※作詞、作曲から始めて、一気に行う“合宿レコーディング”したとは思えない、名曲のオンパレード!!! 

 

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